パイロット「カスタム845」

書くたび惚れる漆の万年筆

今回は、僕がここ数年愛用している一本の万年筆をご紹介します。


その名も パイロット「カスタム845」


まず何より目を引くのは、漆ならではの黒々とした艶。


手に取ると、光をまとったように輝き、存在感を放ちます。


定価は税込11万円と、万年筆の中でも高級な部類に入るモデルですが、それに見合うだけの魅力が詰まっています。


近年、万年筆全体の価格は年々上がっています。


「昔は5万円くらいで買えた」と耳にすることもありますが、それでも今なお人気を集め続けるのは、この845が“単なる筆記具以上”の価値を持っているからだと感じています。


今回は、そんなカスタム845について、


出会いのエピソードから、デザイン、書き味、そして実際に使って分かったメリットと注意点まで、じっくりとレビューしていきたいと思います。

♦︎出会いと第一印象

このカスタム845を迎えてから、もう1年ほどが経ちます。


当時はまだ万年筆を数本しか持っていなかった頃。


SNSで流れてきた一本の写真に、思わず目を奪われました。


それが、このカスタム845。

黒がこんなにも美しく輝くものかと衝撃を受けました。


写真越しにも伝わってくる圧倒的なツヤ感に、心を掴まれたんです。


価格は当時で7万円ほど。


決して気軽に出せる金額ではありませんでしたが、「これを手にしたら、もっと仕事を頑張れる」と自分に理由をつけ、思い切って購入を決意しました。

♦︎開封の儀

さて、ここで少し“開封の儀”についても触れておきたいと思います。


当時の開封の様子を撮影した写真がこちら。

まるで宝物を取り出すような気持ちで、この蓋を開けたのを今でもよく覚えています。

カスタム845は、一般的な紙箱ではなく 桐箱 に収められて届きます。


箱の蓋をスッと外すと、中には鮮やかな 赤色の布団 が敷かれ、その上に堂々とペンが鎮座してます。


この瞬間は、まさに「特別な一本を迎えた」という高揚感を与えてくれますよね。


艶やかな黒の漆軸と、深紅の布団のコントラストは圧巻で、箱を開けた瞬間に思わず息をのんでしまうほど。


実用のための筆記具でありながら、こうして丁寧に仕立てられたパッケージングは、日本の工芸品を手にするような体験を演出してくれます。

♦︎デザイン

カスタム845を語る上で欠かせないのが、その 漆塗りの美しさ

通常の漆仕上げでも十分に美しいのですが、845には「蝋色(ろいろ)仕上げ」という高度な技法が使われています。


これは、ただ漆を塗って乾かすのではなく、塗っては研ぎ、磨き、また塗って研ぐという工程を何度も繰り返し、鏡のような艶を生み出す方法


だからこそ、どの角度から見ても“黒が光を吸い込むように輝く”のです。


また、細部のデザインにも注目です。

天冠と尻軸は「ベスト型」と呼ばれるフラットな形状。


モンブランマイスターシュティックのような丸みのある「バランス型」とは違い、シャープで端正な印象を与えます。

キャップリングの「二つ星」の理由

カスタム845のキャップリングには、二つの星が刻まれています。


カスタム743やカスタムURUSHIには三つ星が入っているので、「もしかしてグレードを星の数で表しているのかな?」と、最初は思っていました。


でも、845だけ二つ星なのはなぜなのか。


この謎は、YouTubeでいただいたコメントをきっかけに判明しました。


メーカーに問い合わせた方がいて、その回答を教えてくださったのですが…


もともとはカスタム845も三つ星だったそうです。


しかし、朱色モデルをリリースする際に、キャップリング背面へ「URUSHI」の文字を刻むことになり、そのスペースの都合で三つ星を刻む余裕がなくなったとのこと。

三つ星時代のカスタム845

(軸の背面に「URUSHI」の刻印)


黒軸なら金文字がはっきり映えますが、朱色に金文字だと視認性が弱くなるため、「URUSHI」をリングに入れる必要があったそうです。

現在の二つ星845

(リングにURUSHIの刻印)


その結果、現在の845は二つ星になったのだとか。


ほんの小さなディテールですが、こうした背景を知ると「二つ星」にも特別な物語を感じられますよね。

15号サイズの18金ニブ

そして、忘れてはいけないのがこの ペン先です。


カスタム845には、パイロットの誇る 15号サイズの18金ニブ が搭載されています。


見てください、この存在感。

大ぶりなペン先に施された繊細な彫金は、光の角度によって表情を変え、まるで工芸品のような美しさを放ちます。


黒の漆軸とのコントラストも相まって、筆記具を超えた“飾って眺めたくなる”魅力がありますよね。


サイズ感としても15号は大きめ。


手帳や日記に細かく書き込むときも、堂々と大きなサインを書くときも、しなやかな書き心地を支えてくれます。


僕が選んだのは 細字(F)。


小さすぎず大きすぎず、ちょうど読みやすく美しい文字が書けるバランスで、日常使いにぴったりです。

♦︎書き心地

一番気になる書き味について。


初めて紙にペン先を置いた瞬間、驚きました。


力を入れなくてもスルッとインクが紙に乗り、文字が自然に流れ出すような感覚。


「書いている」というより、「インクが勝手に文字になっていく」ような感覚に近いです。


ペン先は硬すぎず柔らかすぎず、しなやかにしなるので筆圧を必要とせず、長時間書いても疲れにくい。


加えて、エボナイト+漆の軸がしっとりと手に馴染み、自然に安定します。


そして特筆すべきは、その“軽さ”。


筆記の抵抗感がほとんどなく、スーッと紙の上を走る心地よさ。


気づけば「書く理由がなくても、このペンを使いたくなる」ほどでした。


実際、何かを書こうとして手帳を開くのではなく、「このペンを使いたいから何かを書こう」となってしまう(笑)


これは、書くとしての機能を超えて“書く喜びそのものを提供してくれる”存在だと思います。

♦︎良かった点と気になる点

良かった点

・圧倒的な漆の艶。机に置くだけで気分が上がる。

・書き心地がなめらかで軽い。

・手にしっくり吸いつくようなフィット感。

・実用と美しさを兼ね備えた“特別感”。

気になる点

・漆は直射日光や強い光に弱く、長時間当てると変色や退色の恐れがある。

・価格が高いため、気軽には手を出しにくい。

ただしこれらは欠点というより、「漆という素材の特性」を理解し、大切に扱うことで十分カバーできる部分です。

使わないときはペンケースにしまうなど、少し気を配るだけで長く美しい状態を保てます。

♦︎まとめ

今回は、パイロットの高級万年筆「カスタム845」をレビューしました。

・漆ならではの眩しいほどの艶 
しっとり吸い付く手触り 
・スルスルと軽く書けるなめらかな書き味 

どれを取っても、“使うこと自体が嬉しくなる”一本だと感じます。 

 万年筆は、ただ文字を書く道具ではありません。 

「どんな気持ちで書けるか」も含めて、その価値が決まると僕は思います。 

 この845は、仕事に向かう気持ちを整えたり、日々の記録を特別な時間にしてくれる、そんな力を持った万年筆です。 

 もし「次の一本」を探している方がいたら、このカスタム845は間違いなく候補に入れてほしいと思います。 

 僕自身、これからもずっと手元に置いて、時間をかけて育てていきたい一本です。

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